同盟育成会は2月14日に2022年度の第2回奨学生研修会を日本プレスセンタービルで開催しました。対面での研修会は3年ぶりです。奨学生だけでなく、選考委員、財団の理事ら合わせて70人以上が参加しました。
研修会の講師は、奨学生レポートの添削もしている橋場義之元上智大学教授と朝日新聞社の須藤龍也編集委員。
研修会では福山正喜理事長のあいさつに続き、まず橋場氏が「ニュースの作法~ジャーナリズムを解剖する」と題して講演しました。この中で「ニュースは世界の変化を特定の時間間隔で切り取った未共有の情報」と定義した上で、ワシントンポストの経営に携わったフィル・グラハムの「新聞記者は歴史のデッサンを書く最初の人間」という言葉を引用。デッサンではおおまかなことに過ぎず、さらに「いつ何が見え、知ったのか」(観察)、「見えたことは確認された事実か」(裏付け=証拠)、「見えていない、あるいは見たいことは何か」(疑問)の3つのポイントを押さえなければ、記事として不十分だと指摘。また広く読者に理解させるための「分かりやすさ」の位置づけが困難であること、説得力を持たせるためにデータを活用することの重要性などを力説しました。
サイバーセキュリティ専門記者でもある須藤氏は「新聞記者は見た!~ネットの裏ドリ・裏ワザ・裏社会」の演題で1時間程度、自らの取材体験について、実例を詳細に交えて話しました。同氏はこの中で「サイバー攻撃は『ひと』がもたらす、社会という『人の営み』の一形態」と位置づけ、記事を書く上でも、そうした意識を持ってきたと強調しています。自身が取材・執筆した記事として「病院を襲ったサイバー攻撃」「三菱電機をサイバー攻撃した中国系ハッカー集団「中国ハッカーの経団連攻撃」などを上げ、専門的な知識の裏付けだけでなく、取材源を開拓し、情報を入手する難しさは、この分野でも同様であることを示しました。
また、朝日新聞社が2021年度の新聞協会賞を受賞した「LINEの個人情報管理問題」に関するスクープでは、外交専門の編集委員と協力して、事実関係の掘り起こしと関係者の証言を得ていく過程を、つぶさに描写。特にジャーナリスト志望の奨学生らは、講演内容に感銘を受けたようで、質問が相次ぎました。
研修会終了後、懇親会を開き、大学院を修了する奨学生の代表として一橋大学大学院の長澤涼人さん、学部卒業生の代表で東洋大学の齋藤朱里さんがそれぞれあいさつし、財団への謝辞と、社会で活躍する強い意欲をみせていました。