第2回研修会もオンライン方式で開催

 同盟育成会は2月15日、2021年度の第2回奨学生研修会をオンライン形式で開催しました。新型コロナウイルス感染拡大を考慮し、今回も会場を使用した開催を断念しました。奨学生、選考委員、財団の理事を含め、参加者は87人となっています。

 

 研修会では冒頭、福山正喜理事長があいさつし、特に卒業を控えた大学院修士2年、学部4年の奨学生に対して、2年間コロナ禍で大変な思いをしただろうと話した上で「みなさんのこれからの活躍を祈念している」とエールを送りました。

 

 続いて、元上智大学教授の橋場義之氏が「模索するジャーナリズム~DXへの道」、日本経済新聞社社会・調査報道ユニット調査報道グループ次長の鷺森弘氏が「ニュースの裏側-日経の調査報道はなぜ生まれたか」と題して、それぞれ講演しました。

 

橋場氏の写真
元上智大学教授の橋場義之氏「模索するジャーナリズム~DXへの道」

 橋場氏は、新聞業界がコンテンツ(記事、写真)の作成から配布まで、コストと時間、ジャーナリスト(記者)の独占などによって優位な立場にあったと指摘。ところが、インターネットの普及によって、デジタルディスラプションが起き、新聞のこうした優位性がことごとく、崩されていると説明しました。

 

 これに対し、新聞業界はアナログ原稿のデジタル化に続き、写真や映像の工夫、記者のIT活用などを行っているが、組織全体やさまざまなプロセスを含めたデジタル化には至っていないと強調しました。スマホなどへの記事の提示方法も①個別ニュースの単品提供②まとめて並列で見せる-といった方法にとどまっており、見出しの大きさや行数の長さで記事の重要度が分かるような新聞の手法が生きていないと分析し、対応を促しています。


鷺森弘の写真
日本経済新聞社社会・調査報道ユニット調査報道グループ次長の鷺森弘氏「ニュースの裏側-日経の調査報道はなぜ生まれたか」

 鷺森氏は膨大な公開情報や独自収集したデータを分析して、新たな事実を発掘するデータジャーナリズムの手法で、多くの注目記事を発信してきました。講演の中で、特ダネのような「早耳型スクープ」ではインターネット時代に優位性を長時間保つことができなくなってきた実態を踏まえ、「すぐに後追いできないニュースに価値がある」との考えから、日経らしい調査報道に乗り出したと解説しました。そのスタイルは「仮説」に基づき、「調査」「取材」「検証」のプロセスを何度も繰り返し、取材チームを組んで記事に仕上げていくものだと話しました。

その結果が「タワーマンション建設に多額の補助金がつぎ込まれている実態」や「道路陥没事故と地中深く行われている掘削工事との因果関係」などを明らかにすることになったといいます。陥没事故の取材では、社内のエンジニアの協力があったことを挙げ、編集局にとどまらず、人材や組織のオープン化が重要だと指摘しました。

 


 講演終了後、奨学生からは「調査報道にはどのくらい時間がかかるのか」「ジャーナリズムの追求と多数に閲覧される記事とは相反しないのか」「専門性のない人材が記者として活躍していけるのか」など多数の質問が寄せられました。