同盟育成会は 2 月 15 日、2020 年度の第 2 回奨学生研修会をオンライン形式で開催しました。2 度目の緊急事態宣言が発令中であることを考慮し、第 1 回に続いて会場を使用した 開催は見送りました。今回も奨学生、選考委員を合わせて 74 人と多数が参加しました。
今回の研修会では、冒頭、山内豊彦理事長があいさつし、この中で、特に卒業、修了を迎えた大学生、大学院生に対して、はなむけの言葉を送りました。
続いて最初に元上智大学教授の橋場義之氏が「皇室とメディア」、NHK ネットワーク報道部専任部長の熊田安伸氏が「新しい政治の伝え方」と題してそれぞれ講演を行いました。
橋場氏は、毎日新聞在籍中に宮内庁担当記者として活躍した経験を踏まえ、天皇や皇族を 取材する際の苦心や着眼点などを披露。憲法や皇室典範に明記された法的な面を十分理解するとともに、皇族の世話をする「奥」の人たちを含めて独自の取材源を開拓することの重 要さを伝えました。その上で「皇室は最も遠い存在かもしれないが、天皇制は日本の政治の土台になるものであり、日々のニュースを通じてとらえてみてほしい」と締めくくりました。
NHK ニュースのデジタル展開を担う熊田氏は政治報道に対する見方を変えたいとして、まず、政治報道には政策当局に食い込む「アクセスジャーナリズム」と自らの責任と取材で行う「調査報道」の2種類があると分析。その上で「正確な報道」という原則が「責任ある政治家の発言はそのまま流すのが正しい」という誤解が従来の報道にみられると解説しました。また放送時間や紙面が限られたメディアでは「決定された政策」を報道すればするほど、政権側が目立つことになると指摘しています。
こうした制約から脱するため、NHK や他の大手メディアは、従来型とは異なり、深く堀り下げた政治報道を展開していると紹介しました。また、報道する側にも説明責任があり「取材過程を公開することで信頼感を取り戻せる」「個々の記者が前面に出た方が共感を得やすい」と強調。さらにそれぞれの記者の「一人称」「個の力」を前面に出した方が、記事を読まれやすいと訴えました。
今後の政治報道では「ユーザー参加型」「課題解決型」ジャーナリズムの視点が重要だとして、一般の人が持つ疑問、意見を寄せてもらい、社会を変えていくことに意欲を見せました。最後に「政治家が決めたことを報道する」だけではなく「政治が『わがこと』を解決できるのかを報道する」ことに比重が移っていくとの見通しを示しました。
講演終了後、今回も ZOOM のチャット機能を用いて、奨学生から質問を募ったところ、「皇族との会見の方法」「メディアと首相官邸の関係の不透明さ」「寄せられた情報に対する 信頼性の担保」などについて質問が寄せられ、講師が丁寧に回答しました。
橋場氏は最後に、社会に出る院生、学部生に向けて「世の中のことに目を向けて幅広くニ ュースに触れてほしい。そうすればいろいろなことが目に見えてくる」と呼びかけました。