同盟育成会は10月11日、2020年度の第1回奨学生研修会をオンライン形式で開催しました。新型コロナウイルス感染予防を考慮し、会場を使用した開催は見送りました。オンライン形式は初めてですが、奨学生や奨学生選考委員合わせて74人が参加し、従来を大きく上回っています。
今回の研修会では、最初に、毎日新聞論説室専門編集委員の青野由利氏が講演を行い、その後、元上智大学教授の橋場義之氏との間で質疑応答を実施しました。
2020年度の日本記者クラブ賞を科学記者として初めて受賞した青野氏は「理系の学部 (薬学部) 出身で、なぜ新聞記者になったか」「科学記者として、どう仕事をしてきたか」「科学と一般社会の接点を、どう意識し、どのように書こうとしたか」などについて、具体的な経験をふんだんに交えて講演しました。
中でも「わかりやすさと正確さを天秤にかけざるをえない」ことが最大の悩みであると明らかにした上で、正確さをそこなわずに一般読者に伝える努力が科学記者に求められると強調。接する機会が限られる科学記事について、多くの奨学生の関心を集めました。また毎週土曜日に毎日新聞で掲載しているコラム「土記」について、執筆にあたっての工夫や考え方を分かりやすく説明しました。
橋場氏は「ゲノム編集」「欧米と日本の科学ジャーナリズム」などに言及し、特に欧米との比較では、読者層の捉え方、紙幅の違いにも目を向けるべきだとの青野氏の見解を引き出しています。
講師2人のやりとりが終わった後、ZOOMのチャット機能を用いて、奨学生から質問を募ったところ、多数の質問が集まりました。会場で挙手をする方式とは異なり、質問者の名前や内容が事務局以外には分からない方法を利用できるため、疑問を投げかけやすくなったようです。
質問は「科学記者として取材する際の苦労」「日本学術会議の候補者選定問題」「反科学的な意見や風潮に対するメディアの取り組み」といった具合に多岐にわたりました。
最後に、就活を目前に控えた学生から「コロナ禍で勉強の機会が制約される中で、大学院に進学するか、就職するか、迷っているのでアドバイスを」との要望が寄せられました。青野氏は「『正しい道』というのはないと思う。迷いながらでも進むと落ち着くところに落ち着くことがある、大学院に行くかどうかでどちらを選んだから正解ということはない。今の判断が将来全てを決めていくとは思わない方がいい」と助言。橋場氏は「自己イメージにとらわれすぎず、(環境の変化によって) どんな人にもなれるぐらいの感じがいい。やりたいと思ったら、突き進んでほしい」とエールを送りました。