同盟育成会は2月19日、東京・内幸町の日本プレスセンタービルで2019年度第3回古野奨学生研修会を開催し、奨学生や奨学生選考委員ら68人が参加した。研修会では、コーディネーターを務める元上智大学教授で元毎日新聞記者の橋場義之氏が「現代のフェイクニュース~メディアと私たち」の演題で講義したほか、フリーライターで批評家の永江朗氏が「私のインタビュー術」のテーマで講演した。
橋場氏は、嘘の混じったニュースへの対処策に関して、「特効薬はない」と強調。騙されないためには、とにかく疑うという「健全な懐疑主義」を持つとともに、一般教養を身に付ける必要性を指摘した。
橋場氏は、記事を疑う場合、出典、出所に関することが書いてあるのかを注意する必要性を強調した。
同氏は、フェイクニュースが拡散するスピードが極めて速く、「ツイッターでは真実の6倍の速さだ」とし、これに関して、英国のチャーチル元首相の「嘘が地球を半周しているころ、真実は(追いかけるために)パンツをはこうとしている」との言葉を紹介した。
フェイクニュースが拡散する理由としては、とにかく内容が面白く、それが指摘する事象に対する「解決策を早めに示してくれる」といった特性があるとした。
橋場氏は、朝にフェイクニュースが流れ、夕方に訂正され、翌日には訂正を前提としたニュースを流すというネットニュースの特性を挙げ、毎日一定の時間帯にニュースをチェックする習慣を付けることを推奨した。
一方、日頃の取材活動でインタビューを重ねている永江氏は、インタビューについて①事前の準備②実際のインタビュー③インタビュー後の3段階に分け、自分が実践している内容を説明した。
事前の準備では、まず100程の質問を作ったうえで、それを与えられた時間などを踏まえ、10ないし3ほどに絞り込んでいるという。また、相手を知るために、東京・世田谷区八幡山にある大宅壮一文庫で、過去にどのようなインタビューでどんな内容の話をしたか調べてから、相手との面談に臨んでいる。
実際の面談では、ICレコーダーとスマホのレコーダーを用意し、電池切れや記録容量オーバーの事態に備え、ノートは質問項目を書いたものとメモ用の2冊を持参。筆記用具はボールペンや万年筆だと、ソファーなどをインクで汚す恐れあるので鉛筆を使っているという。
永江氏は、インタビュー後に実践していることについて、メモおこしとともに礼状書きを毎回行っていることを強調。礼状を送ることで、追加取材や補足取材が必要になった際、相手が気軽に応じてくれる可能性があることを指摘した。
また、同氏はインタビューが上手になるには、慣れと繰り返しだとし、「話下手な方が、相手が心を開いてくれる」と述べ、インタビューの実践を促した。
研修会後、同ビル内のレストランで懇親会が開かれ、同盟育成会の山内豊彦理事長が、学部学生の卒業生、大学院の修了生にお祝いの言葉を述べるとともに、記念の万年筆を一人ひとりに手渡した。
これに対し、4月から読売新聞大阪本社に記者職で就職が決まっている早稲田大大学院の門間圭祐さんと、共同通信の記者職で入社する東洋大の相澤一朗さんがそれぞれ謝辞を述べた。
懇親会には十の大学から、奨学金担当者のほか、茨城大学の古賀純一郎名誉教授らが参加した。